韓国KBS番組「シルムの喜悦」の反響

「太白から金剛まで – シルムの喜悦」という番組タイトルは、日本人ではピントこないが、これが、今、韓国で注目されている格闘技「シルム」を題材にしてスポーツバラエティなのです。
*2019年11月30日から2020年2月22日まで韓国放送公社(KBS)で放送

番組では、シルムの軽量級にあたる「太白」と「金剛」の階級からそれぞれ実力のある選手を8名ずつ選抜、総勢16名で軽量級シルムの王者、「太極壮士」のタイトルを手にするためのサバイバル形式を繰り広げた。今までになかったシルムのサバイバル番組は、視聴者にシルムの新たな幕開けを告げました。
ここでは、韓国内での番組「シルムの喜悦」放送に対する反応をご紹介したい。
そして、この番組が日本で放送されることを心待ちにしている。

シルムの喜悦、そしてシルムの革新

―FORTUNE KOREA(http://www.fortunekorea.co.kr/news/articleView.html?idxno=12007
 2020年1月2日 FORTUNE’S EXPERTアン・ビョンミンの話を一部抜粋

薄氷。
凍ったばかりで厚さが薄い氷なので、割れてしまわないか不安です。
『薄氷の勝負』という言葉はそれほど差がなく、予測できない競技を指す表現です。
ところが、毎試合が薄氷なのです。ものすごいスピードで華麗な技が繰り広げられたので、一瞬を逃すのではと両目を見開いて見入ってしまいます。シルムってこんなにドキドキさせるスポーツだったでしょうか。

最近新しく始まったKBS TV『シルムの喜悦』の話です。
薄暗い屋根裏に追い込まれていたそのシルムが、第4次産業革命時代にミレニアル世代を背に華やかに復活しました。

「こんなに素敵なものを、おじいさん達ばかり見ていたなんて」

YouTubeを通じて『シルムドル』の競技シーンに接した若い女性ファンたちがその始まりでした。筋肉質の体に顔までイケメンとくるとは、まさに土俵のアイドルです。体格の大きな選手らの退屈な力比べではなく、技で武装した選手たちのダイナミックなシルムが繰り広げられると、人々が集まります。この番組「シルムの喜悦」は、この小さな火種をさらに大きく育てています。その革新要素をまとめてみます。

まず「ストーリーテリング」です。全盛期を過ぎた土俵は、誰も関心を持たない彼らだけのリーグでした。選手の戦績や競技スタイルはもちろん、どの選手が活躍しているのかも知りませんでした。

ところが、シルムの喜悦はここに焦点を当てます。選手一人一人の得意技と彼らのプロフィール、短いが人生のストーリーまで見せてくれるので、選手がただの選手ではありません。知らない時は他人ですが、気付けば愛情が芽生えています。

選手の成長過程や主に使う技、シルムスタイルまで知ってくるとニックネームも生まれます。シルムの喜悦での試合中、相手選手のサッパを引き裂くほど握力の強いある選手は、
『サッチンナム(サッパを破く男)』
というニックネームが付けられました。
それだけではありません。

『10秒勝負師』、
『感覚シルムの達人』、
『土俵のターミネーター』、
『シルムの天才』、
『次世代の金剛壮士』など、

それぞれの特徴からニックネームが付けられ、キャラクターができました。 キャラクターはすなわち個性であり、個性はすなわちファン形成です。

「三国志」に出てくる数多くの英雄豪傑のように、土俵にもそれぞれのキャラクターを中心にファンが生まれます。試合結果だけが重要だったシルムにストーリーが結びついて、視聴者の共感を得られます。シルムの喜悦から読み取る最初の革新です。

第二の革新は編集とアングルです。昔のシルムには中継用カメラが何台もありませんでした。だから、画面越しに見るシルムは単調極まりないのです。そんな似たり寄ったりな画面が続くと、一人、二人と視聴者は去ります。

そのためでしょうか、この番組がシルムを見せる方法は以前とは違います。多くのカメラで様々な角度から試合を撮影します。右からも撮って、左からも撮って、上からも撮って、下からも撮ります。 死角はなくなり、画面はダイナミックです。一瞬も逃さず、反対側の姿もつかみ、選手の微細な動きまでキャッチするので、あっという間に終わった試合もドラマのように鮮やかです。
その美しい映像にシルムの技についての情報が加わります。アンムルプチギやオグムダンギギなどの手技、内股や外股などの足技、ベジギやドゥルベジギなどの腰技をわかりやすく見せ、説明してくれます。

知れば知るほど見えてきます。昔は見えなかったシルムの技が一つ一つ見えてきます。その短い瞬間に繰り広げられる、選手たちの熾烈な攻防がやっと目に入ってきます。 面白さは増して、没入感は深まります。撮影・編集方式の革新によって作り出された成果です。

シルムの喜悦はシルムバラエティという新しいジャンルを作り出しました。
従来のシルム競技だったらありえない、異なる階級同士の対決も可能なのです。太白級と金剛級の選手たちが土俵で激突します。例えるなら、雷の神トールとキャプテンアメリカの対決です。 想像の中でのみ可能だったことです。同じ所属チームの選手たちもライバル戦という名前で対決します。破格であり逸脱です。視聴者がテレビの前で釘付けになる理由です。番組「シルムの喜悦」から読み取る第三の革新要素です。

興味津々なストーリーテリングに、新しい方式の撮影編集に、既存のカテゴリーの境界をはるかに越える特別な価値まで加わって、シルムにそっぽを向いた、シルムに関心のなかったお客さんが競技場に詰め掛けています。