【翻訳】韓国VSモンゴルVS日本 伝統格闘技はどう異なるか

チェ・チャンソクのパワーカルチャー

 

韓国伝統シルム、腕と背中の筋肉を多く使用

檀君朝鮮時代から部族国家時代までにおいてはシルムを「チウヒ」と呼んだ。
伝説的な軍神であり、武神であるチウ天王からその名を取ったものとされている。
その後、「角抵戯(カクチョヒ)」や「シルフム」と呼ばれた。
シルムの歴史はこのように古い。
高句麗古墳の角抵塚の壁画と長川1号墳の壁画にはシルムの場面が、安岳3号墳の壁画にはスバク(手搏)遊びの場面が描かれている。
韓国のシルムは、サッパを利用して相手を確実に掴んで始める。
その後、手、足、上半身で様々な技を駆使する。

韓国の伝統シルムの特徴は何だろうか。
韓国のシルムはサッパを握ってスタートし、様々な技で相手を倒す競技だ。
シルムの技としては、オグムチェギ、アンタリの返し技からの叩き込み、ベジギ、オルンティジプキ、アンタリゴルギ、ドッコリなどが挙げられる。

まず立ち上がりは2人の選手が手でサッパを握って肩をつけて近接している姿勢になり、相手を攻撃する。

オグムチェギは、攻撃者が足サッパを握った左手で、相手の右側のオグム(膝の裏側)を瞬間的に引っ張り、同時に相手を右肩で押す技だ。
つまり、手で技をかけて肩で相手を制するのだ。
腕と背中の筋肉を同時に使った技だ。
また、攻撃者がアンタリを避けた後に手で相手の頭を押す技もある。
この技は腕や背中だけでなく、脚の筋肉も使う。

ベジギは相手を空中に持ち上げた後、体を右に回して相手を倒す技だ。
また、オルンティジプキは攻撃者が体の重心を急に低くして、頭を相手の右脚の外側に出し、下腹部を空中に高く押し上げながら、腰サッパは内側に回る方向に力いっぱい引っ張る技だ。
難しいが華麗な技だ。この二つの技は背中の筋肉を精一杯使った。

アンタリゴルギは右足で相手の左足を内側から外側に回して肩で押す技。
この技は脚や背中の筋肉を主に使用したものだ。
ドッコリは右足で相手の左足を外から内側に巻きつけて肩で押す技だ。

このように、韓国の伝統シルムでは概ね手と脚で技をかけ始め、上半身の力で相手を制する技が多い。
背中の筋肉を多用しながら、脚、腕、手の筋肉も合わせて使っていると考えられる。
脚、腕、手の中では脚の筋肉よりも手と腕の筋肉を主に使う。
手でいつもサッパを握っているからだ。
実際には、手と腕の筋肉が発達したため、恐らくサッパを握る形で定着・発展したはずだ。
こうした観点からブフと相撲とも比較してみよう。
韓国シルムの特徴を捉えやすくなるだろう。

 

モンゴル伝統格闘技のブフは脚と背中の筋肉を多く使用

ブフは13世紀のチンギスハン時代に広く普及したが、国家的行事(主に祭典)から部落の祭りに至るまで、欠かさずブフの大会が登場した。
各部落を代表する選手が部落対抗の団体戦、個人戦を繰り広げる。
服装は半長靴に半ズボンを履き、上着は真鍮の装飾がついた半袖のベストを羽織って、背中には十字の帯をかける。
試合方法は、両腕を前に構え、チャンスを見計らって相手の上着をつかみ、脚をかけて相手をひねったり投げたりして倒すと、勝負が決まる。

ブフの立ち上がりは2人の選手が向かい合って相手を掴み合おうとする姿勢だ。
試合の始まりとともに肩を掴み合う姿勢が多い。
おそらく、この姿勢では腕や背中の筋肉を使いやすいだろう。
例えば、攻撃者が腕をかけて背中の筋肉で相手をひねることもある。
韓国のシルムでいえばチャドルリギのような姿だ。

一方、胴体と腕をつかんで脚をかけて相手を倒す技も使う。
韓国のシルムでいえばアンタリゴルギに似た姿だ。
ブフではこのように肩を含む上半身をつかんで足と脚で相手の重心を崩そうとする技が多く見られる。
つまり、足と脚の使用が頻繁なのである。

このようにブフは、韓国のシルムに似通った技が多く登場する。
両国とも北方型が多く、筋肉の発達も類似しているためと思われる。
しかし、サッパの有無は最大の相違点だ。
韓国のシルムはサッパを握り、手と腕で相手に力を確実に加えることが容易である反面、モンゴルのブフはサッパがなく手と腕で力を確実に加えることが難しい。
このため、ブフは足と脚を相対的に多く使うようになったのである。
韓国は手と腕の筋肉が、モンゴルは足と脚の筋肉が相対的に発達したために現れた違いだろう。

 

日本伝統格闘技の相撲は腕と手の筋肉を多く使用

相撲は長い歴史と伝統を持つ日本の国技である。
裸に廻しを巻いた二人が向かい合って、相手を倒したり、土俵の外に押し出したりして勝敗を競う競技である。
百済のシルムが日本に伝わったというのが一般的な学説だ。

相撲の立ち上がりは、2人の選手が中腰で相手をにらむ。
2人の選手が離れた状態で始まる姿は、モンゴルのブフと似ている。
その後、腕で押し合う場面が多く登場する。
そして、土俵の外に押し倒したり、廻しを取ってさっと投げ出したりする。
また、廻しを取って相手を回して押し出したり、転がして倒したりする。

相撲はシルムとブフに比べ、手と腕を使う技が多く、足を使う技は少なそうだ。
彼らは手と腕の筋肉がよく発達したからだろう。
こう見ると、相撲はシルムとブフとは違って、安岳3号墳の壁画に描かれたスバクに近い。

 

韓国、モンゴル、日本の伝統シルムに対する進化論的な解釈

これら3カ国の筋肉使用の程度を比較してみると、背中と腕の筋肉を多用するという共通点がある。
しかし、脚と手の筋肉の使用度合いには多少差がある。
モンゴルは脚の筋肉を、日本は手の筋肉を多く使い、韓国はこれらの中間ぐらいだ。
つまり、それぞれよく発達した筋肉を多く使うものと考えられる。

このような筋肉の発達度合は、各国の遺伝子比率からも分かる。
北方型は狩りを通じて、背中、腕、脚の筋肉が、南方型は果実摘みや貝取りで手と腕の筋肉が発達している。
したがって、北方型が最も多いモンゴルは脚の筋肉が、南方形が最も多い日本は手の筋肉が特に発達しており、韓国はその中間といえる。
このため、各国のシルムの形態、技、勝ち方も異なってきていると考えられる。
モンゴルは2人の選手が離れてスタートし、背中と脚の筋肉を多用する技で相手を倒す。
一方、韓国はサッパを互いに掴んだ状態から始まり、使う技と勝利方法はモンゴルに似ている。
日本も2人の選手が離れてスタートするが、手で相手を土俵の外に押し出す。

モンゴルと韓国の始まりの形が違うのは、韓国の発達した手の筋肉をより積極的に使うためと見られる。
モンゴルと日本は相手を掴まずに離れて始める形は同じだが、その理由は異なっている。
モンゴルは手の筋肉があまり発達していないために互いに掴まず、日本は相手を土俵の外に押し出しやすいように掴まないようだ。

このような理由から、各国のシルムは、彼らの筋肉の発達に適した形態へと発展し、定着したものと考えられる。
筋肉の発達は、長年の進化の結果であり変わらないものだからだ。
したがって、背中、腕、脚の筋肉の使用は伝統シルムだけでなく、アーチェリー、ゴルフ、ショートトラック、フィギュアスケートなどのスポーツ分野でも才能を見せた。
また、伝統舞踊、書体、山水画などの文化分野にもそのまま表れている。
よく発達した筋肉を様々な分野で不知不覚に使っているからだ。

 

–大韓シルム協会 씨름터 vol.18より一部抜粋して翻訳
(http://ssireum.sports.or.kr/gnb/img/pdf/gro_18.pdf)