【翻訳】韓国の歴史的価値「雄牛トロフィー・巡回杯」

雄牛トロフィーは選手らに羨望の的になっている。
シルムの最高位に立ってこそ得られるのが「雄牛トロフィー」だからだ。

 

高麗時代や朝鮮時代には、王が名節になると、勇士だの力士だのといったシルム選手を集めて試合を開かせては、見物をした後に褒美を与えた。
記録によると、高麗の忠恵王は勇士に木綿を与えたとされ、朝鮮時代の世宗大王時代には差をつけて賞を与えたという記録だけがあり、賞は何だったのかは明らかにされていない。

しかし、伝統的にシルムで勝った壮士には雄牛一頭を与えるが恒例となっていた。
文献の記録はないが、王が優れた勇士や力士に授けた賞品の最上級も雄牛だったとの憶測が飛び交っている。
当時の民家で最も貴重な財産の一つが牛で、農業のほとんどが牛の力を借りなければならなかった農耕社会において、雄牛ほど豪勢な賞品はなかったはずだ。

そしてそれがきっかけとなり、シルムでは今でも優勝者に雄牛を賞として与えるのが慣例となっている。
現在は、過去とは違って直接雄牛を授けるのではなく、雄牛の形にトロフィーを作って地域壮士大会の優勝者に牡牛トロフィーを授けている 

シルムのように動物を形象化したトロフィーを与えるのは珍しい。
大抵、他種目のトロフィーはカップの形、競技道具、競技姿勢を形象化して作る。
それだけその種目を代表するもので作るのがトロフィーだ。

シルムのトロフィーは2種類に分けられる。
前述の雄牛トロフィーと、アンタリの技を形象化したトロフィーがある。
2013年までは正規大会の団体戦と統一壮士の部の優勝者には雄牛トロフィーを授与していた。
しかし、2017年からは雄牛トロフィーの意味をより高めるため、地域壮士大会の優勝者にだけ雄牛トロフィーを授与し、正規大会の優勝者にはアンタリのトロフィーを授与している。


▲地域壮士大会の優勝者にだけ雄牛トロフィーを授与


▲地域大会4階級(太白級/金剛級/漢拏級/白頭級)優勝者に授与

今や「雄牛トロフィー」は、選手らに羨望の的になっている。
シルムの最高位に立ってこそ、手に入るのが「雄牛トロフィー」だからだ。
雄牛トロフィーはその雄壮さに比例して重さもすごい。
鋳物が主材料の雄牛トロフィーは幅30cm、高さ25センチcm程で、重さは5~6kgを超える。
大人の女性が片手で持つのが精いっぱいだ。


▲雄牛トロフィーと巡回杯

未だに北朝鮮ではシルム大会の時、本物の雄牛を賞金として与えている。
2010年に平壌市の「陵羅島シルム競技場」で開催された「第8回大雄牛賞全国民族シルム競技」の優勝者には980kgの雄牛と金牛の鈴が贈られたという。

毎回大会を誘致している報恩郡の場合、「IBK企業銀行2014報恩壮士シルム大会」の時から本物の子牛を賞品として掲げ、大きな反響を呼んだ。
かつてのように大きな雄牛でもなく、子牛が競技場の中に入ってきたわけでもないが、シルム場に子牛が登場しただけでも懐かしさを呼んだ。

大韓シルム協会では地域大会4階級(太白級/金剛級/漢拏級/白頭級)の優勝者に雄牛トロフィー以外にも、2012年に作られた「巡回杯」が贈られている。
巡回杯は「巡回」(いろいろな所を回る)と「杯」(運動競技で優勝したチームや人に与えるトロフィー)が合わさって、巡回杯と呼ばれている。

「雄牛トロフィー」のように優勝者が永遠に所有するのではなく、大会(地域大会)ごとに優勝者が変わる時、巡回杯は新しい優勝者の手に渡る。最も大きな例としては、W杯優勝カップも巡回杯の一種だ。

巡回杯を作った決定的な理由もここにある。
単なる見せかけではなく、シルムの歴史が一目で分かり、時間が経っても永久保存できる何かについて悩んだ末に作ったのが「巡回杯」だ。

巡回杯を作る過程も容易ではなかった。
従来の巡回杯と違って差別化を図るため、体育社、トロフィーを作る所など、あちこちを歩き回ったが、すべて似たり寄ったりだった。
最も大きな問題はシルムだけの巡回杯がないことだった。
こうして巡回杯についての悩みが深まった頃、俗離山(ソクリサン)の「法住寺(ポプチュサ)」で巡回杯の答えを見つけた。

現在の巡回杯は法住寺の銅鐘(宝物1858号)を形象化した。
銅鐘をひっくり返して、鐘に蓮の花ではなくシルムを代表する技を刻み込み、階級別に4つの巡回杯を手作業で作るのに丸1ヵ月という時間がかかった。
手作業で作られているため、巡回杯をよく見てみると、階級別に4つの巡回杯の形が違うことが分かる。

雄牛トロフィーと同じく巡回杯の主材料も鋳物だ。
しかし、重さは雄牛トロフィーの4倍にもなる20kgを超える。
今は時間が流れ、優勝者の指紋が付いて巡回杯特有の趣が感じられるほどだ。

今、巡回船を導入してからは8年しか経っていない。
しかし、50年、100年という歴史をかけて巡業を続けていけば、シルムを代表する歴史的物品になると確信する。
特に、歳月が経つにつれてその価値がより輝くように、私たちから巡回杯の価値を認めて保存するのが私たちシルム人の役目だと考える。

 

–大韓シルム協会 씨름터 vol.18より一部抜粋して翻訳
(http://ssireum.sports.or.kr/gnb/img/pdf/gro_18.pdf)