【翻訳】「サッパ・シルムパンツ」お前らどれだけ知ってんの?

多くの人は、シルムは単に相手を倒せば勝つ試合だと思っている。
しかし、シルムは両選手間の重心争いだ。
力が強いからといって勝つわけでもなく、体重が重いからといって勝つわけでもない。
どちらが互いの力とサッパをうまく利用できるかがカギだ。
試合が始まると、互いにさらに低い姿勢で攻守を繰り広げる理由もここにある。

中でもサッパは、シルム選手にとって唯一の競技道具であり、命綱だ。
試合開始時には平等にサッパを握るが、主審の合図で始まると、どちらがサッパをよりしっかりと掴めるかが勝負を決める重要な要素になる。


▲選手同士サッパを掴み、主審の合図を待っている

このようにシルムはサッパをどう掴むかによって競技の勝敗に大きな影響を及ぼす。
サッパを握れる範囲は定められており、これに違反した場合は警告を受ける。
警告は1分の試合時間が終わった延長戦でも適用される。
延長戦が始まると、警告を受けていない選手は警告を受けた選手のサッパをもっと深く掴むことができる「ドチャプキ」が可能になる。
ドチャプキは、自分の好きなだけ相手のサッパを掴むことができるため、試合を有利に展開できる。

大韓シルム協会でも、唯一の競技具であるサッパを通じてより迫力あふれる競技を見せるために絶えず努力している。
継続的にサッパの結び目と結び方を修正し、選手たちにサッパに関するアンケート用紙を回してデータを分析するなど、改善策の模索に熱中している。

サッパは試合の時だけ利用されるわけではない。
民俗大会の各階級優勝者が乗る神輿にも青・赤色のサッパが飾られている。
神輿にシルムの象徴性を与えるための理由からだ。
これだけではなく、民俗大会の優勝者たちは試合終了後、自分が巻いていたサッパにサインして大韓シルム協会に寄贈する。
これは後にシルム博物館ができた時に展示される予定だ。


▲民族大会優勝後サッパにサインをして記念撮影を行っている

2011年に引退した「シルム界の貴公子」ファン・ギュヨン(元現代ゾウシルム団監督)と「シルムの皇太子」イ・テヒョン(龍仁大学監督)も引退式で自身が現役時代使っていたサッパを大韓シルム協会に寄贈し、その意味を深めた。

大韓シルム協会のCI(コーポレート・アイデンティティ)にもサッパが登場する。
大韓シルム協会のCIの説明には、「シルムの象徴である赤のサッパと青のサッパを表現。
青サッパと赤サッパが調和する形は陰(青)と陽(赤)の調和、そして青サッパと赤サッパの選手が一体となって試合が行われることを象徴的に表現する」と書かれている。

サッパはもう競技の時だけ使う道具ではなくなった。
シルムを代表する物であり、遠い未来のシルムの歴史を物語る価値のある物である。

 

サッパと同じくらい重要なものはシルムのユニフォームだ。
通称シルムパンツと呼ばれる。
シルムは5千年の長い歴史を持っているが、シルムパンツが正確にいつから着用されたのかは分かっていない。
しかし、農耕社会時代、仕事に疲れた庶民たちが上着を脱いでお互いの体を寄せ合って取り組んだことが自然に今までにつながったようだ。

今でこそサッパがあるが、昔はサッパさえもなかった。
サッパの代わりに、互いにズボンの裾をつかんでシルムをした。
キム・フンドの『シルム(絵画)』にも出てくる。
絵の中の二人は特定の道具もなく、互いの服をつかんでシルムをしている。
これはシルムの最大の長所でもある。
サッパなしでもどこでもできる運動が、シルムだ。


▲キム・フンド『シルム』

しかし、大韓シルム協会が主催する大会ではサッパと、本部が認めるユニフォームを着用しなければならない。
シルムパンツの色は青・赤色で、所属名と選手氏名が明記されたユニフォームを必ず着用して競技に臨む。
小・中・高等部のユニフォームは左右中心線の幅10cmの白色部分に選手名を表記し、大学の部と一般の部のユニフォームは左右中心線の幅を15cmとする。(2018・01.24.改正)

ただし、一般の部に限り地域大会では青・赤ではなく、異なる色のシルムパンツを着用することができる。
また、試合のユニフォームに広告文を挿入することができ、広告文(位置、大きさなど)は大韓シルム協会の許可を得なければならない。

シルムは他の種目と同じく監督、協会関係者の服装も指定されている。
正規大会はスーツを、民俗大会には韓服を着る。
すべてのスポーツ種目を問わず、競技中に韓服を着る種目はシルムだけだろう。
これはシルムが韓国の伝統スポーツだということを知らせてくれる部分だ。

 

シルム最大の精神は温故知新といえる。昔のものを覚え、それを後にして新しいことを知るという言葉のように、シルムが本来持っていた規則と方式は、昔のままだ。
ただ、スポーツ種目として、見る人たちにより迫力あふれる競技を提供できないかと絶えず悩んでいる。
サッパの結び方、試合の服装規定、延長戦、ドチャプキなどの多様なルールが作られ、これらは試合の迫力を高めた。

サッパと競技の服装もそれに含まれる。
もしかすると、他の種目に比べてみすぼらしいユニフォームであり、たいしたことはない競技道具であっても、我々には誇らしいユニフォームであり、きらびやかな金色のサッパである。
そしてこれからもそれを守り、継承・発展を守ることが、我々がすべきことだ。

 

–大韓シルム協会 씨름터 vol.18より一部抜粋して翻訳
(http://ssireum.sports.or.kr/gnb/img/pdf/gro_18.pdf)